NPAコラム

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 誰もが“〇刀流”の時代へ

2024年1月1日

NPO政策研究所会員 匿名希望(枚方市在住)

 

日本の人口が減少に転じてから約15年がたった。総人口は2008年の128,084千人から2021年には125,502千人と、2,582千人も減少している。これは市町村別人口第3位の名古屋市(2,327千人)を上回る規模であり、鳥取、島根、高知の3県の合計人口よりも多い数字である。

 

昨年は、長時間勤務の抑制に向けた働き方改革の進展もあいまって、人口減少が、労働力不足として顕在化した1年であった。

新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い、まちに賑わいが戻ってきたが、観光客を迎え入れる人材やタクシーの不足が話題となった。公共交通や物流、医療など多くの業種で、労働力不足から様々なサービスの撤退・縮小が打ち出された。コロナ禍にあっても懸命につなぎとめてきた糸が耐え切れなくなって、様々なサービスが姿を消していった感がある。改めて、使命感や多くの創意工夫、努力によって、様々なサービスが維持されてきたことに気づいた。それが、地方部だけでなく都市部においても限界を迎えつつある。たとえ景気がよくなったとしても、元には戻らない。今後は官民問わず様々なサービスの空白地帯が、急速に拡大していくだろう。

 

では、どうすればよいのか。その手がかりは「考え方を変える」先にあるのだと思う。人口減少のスピードを抑制しつつも、人口減少社会を前提として残したいもの・残したいことを共有し、将来にありたい地域社会・暮らしの実現に向けたまちづくりに取り組む。従来と大きく異なるのは、行政やコミュティのことだけでなく、民間のサービスやしごとも含めて、大きな地域社会のビジョンを描くことである。ある日突然、大切やお店やサービスがなくなる喪失感を少しでも減らすには、行政・地域・民間の分け隔てなく、互いの事情を共有し、支えあっていくことが大事だ。

 

カギとなるのが「あるものを活かす」発想、「つなげていく」発想(多機能化)、「1人がいくつもの役割を果たす」発想(多能工化)と、デジタルの活用(時間・空間を超えてつながれる仕組み)ではないだろうか。様々なサービスの専門化・分業化は、人口が増加し、市場が拡大していたからこそ成り立っていた。今後は、最低限の安全・安心を確保しつつ、日替わりあるいは午前・午後で複数の仕事をかけもちすることなどで、少ない需要に対応することになるだろう。毎日は無理だとしても、身近なところで必要なサービスを利用し続けることができるような地域社会になればと願う。

誰もが“〇刀流”で、様々な役割を果たしていくことができれば、人口減少社会においても豊かな暮らしを維持していけると思いたい。

 

 

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