NPAコラム

2021年9月から、会員+αの皆様によるコラムを隔月で掲載しています。


 「土の記憶 土がつなぐもの」

2025年1月1日

仲野優子 NPO政策研究所/しがNPOセンター(草津市在住)

 

「土」に関わる記憶を辿ってみる。大阪市内で育った私にとって最初の土の記憶は、かくれんぼで入り込んだ路地(ろおじ)の黴臭い苔のような匂い。その頃の道はコンクリートやアスファルト舗装で、定期的に散水車が走っていた。土埃(つちぼこり)を抑えるためと思っていたが、後になってアスファルトが溶けるのを防ぐためだと聞いた。そういえば炎天下、溶けたアスファルトに草履をとられ困っている人をよく見かけた。

 

教職で滋賀に赴任した当初は、田んぼと畑の違いがわからなかった。子どもたちに教えられたのは私の方で、授業中に棚田に行って、上のため池からおちてくる水の流れを追うのが新鮮だった。また「地べた遊び(けんぱや陣地とり)」の線をかくときに、子どもたちが木切れを使うのも珍しかった。大阪ではローセキ(蝋石)やチョークがいつもポケットにあった。今や「地べた遊び」もないようだが、数年前のイベントで、水で消せるチョークを使ったお絵描き体験を行ったらめちゃくちゃ盛り上がった。

 

教員を退職後、市民活動の相談窓口にいた時に、駅前マンションの住民から「プランターの土の捨て方」を聞かれた。「集めている団体はありますか」「ゴミに出すなら分別はどうすれば」と。川原や山に勝手に捨てると違法投棄になる、という。自然豊かな滋賀県でも、土の捨て場に困るんだと思った。園芸のボランティア団体につなぐことは可能だが、と答えた記憶がある。

 

2012年からは仕事で環境保全活動の助成金の事務局に携わり、滋賀・京都エリアで、毎年約60団体の活動を支援している。サイト上で採択団体をカテゴリーに分け、活動レポートを掲載しているのだが、水・水辺 (26団体)、森・林・里地 (67団体)、動物・生き物 (20団体)、植物 (47団体)、エネルギー・エコ (10団体)、子ども (43団体)と、土や水に関わる活動を地道に継続している団体が多い。

夏原グラント:公益財団法人平和堂財団

 

5年程前、地域のまちづくり協議会で「若者プロジェクト」を始めた際、若者が選んだ活動は畑の作業だった。「ツナガリ隊」として、枝豆やサツマイモ作りに励み、今ではふれあいまつりなどのイベントの主力にもなっている心強いメンバーである。新興住宅街に越してきた若者にとっては土が新鮮で、子どもたちと一緒に蛙に驚きながらも楽しんでいる。サポートするシニアは地元民が多く、草刈り機やマルチ張りのコツを伝授する。合間に夏野菜なども収穫できて家計にも優しい。作業はTシャツ着用(50色ある)なのだが、行くたびにTシャツの色が増えているのに驚く。今は、土を通して、驚きや共感のつながりが広がるのを実感している。

笠縫ツナガリ隊) 

 

 

 

 

写真1 「地面にお絵描き:まちづくりスポット大津」

 

 

 

 

 

 

写真2 「玉ねぎの収穫:笠縫ツナガリ隊」 

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2024年1月1日 

誰もが”◯刀流”の時代へ(NPO政策研究所会員 匿名希望・大阪府枚方市在住)