NPAコラム

2021年9月から、会員+αの皆様によるコラムを隔月で掲載しています。


市民活動人生最終期の挑戦~帯解駅舎をめぐる地域活動

2025年7月1日

木原 勝彬(帯解駅舎保存・活用の会代表、NPO政策研究所会員・元理事長、奈良市在住)

 

 

 奈良でのまちづくりを実践しようと、東京での会社勤めに踏ん切りをつけて、故郷奈良にUターンしたのが1978年。奈良町の歴史的町並み保存運動への心酔を機に、市民活動をライフワークにすると決意してから、かれこれ半世紀になる。市民活動人生の最終期に入ったここ5年は、過去に学んだ経験を総動員して、地元であるJR万葉まほろば線帯解駅舎の保存・活用に全力を傾注している。

詳細は、以下である。明治31(1898)年に建設され、現在、奈良市所有の登録有形文化財になっている帯解駅舎を、奈良市が大正15(1926)年当時の駅舎に復原整備し、整備後の駅舎を「帯解駅舎保存・活用の会(以下、本会)」が地域内外の人々との交流拠点として活用(管理運営)することをめざすプロジェクトである。竣工は2027年3月を予定している。

 

 市民活動人生の総仕上げとの思いで駅舎の保存・活用活動を開始したが、今に至るプロセスは予想を超える厳しい道のりであった。本コラムでは、直面している現実の問題の紹介に留めることにし、それらの要因分析等を踏まえた総合的な考察については、駅舎竣工後の宿題としたい。

 

 ところで、奈良市との関係である。現駅舎を大正15年当時の駅舎に復原整備するという目標の共有に至るまでには、5年間(2019~2023年)で90回の折衝・交渉(提案、要望等)を必要とした。この間の意思決定の遅れが、竣工を大幅に遅らせた要因である。昨年6月、本会と奈良市担当課との間で「協働による帯解駅舎保存整備事業の推進に伴う協議について」の申し合わせをおこない、毎月、迅速な課題解決と事業の円滑化を図る定例協議を続けている。

 

 一方の地域である。駅舎活用による地域の活性化をめざすという本会の活動は、人口が減少し続け、少子・高齢化で元気をなくしつつある帯解地域(2024年4月の校区人口2,751人で10年前に比べて2割減少、高齢化率44%、年少人口9.5%)であるから、比較的スムーズに受け入れられ、地域住民の入会及び行事の参加もそれなりに確保できると期待していた。しかし、地域住民を対象にしたフォーラムや意見交換会等への参加は少なく、駅舎に対する関心は総じて低い。それに加えて私を悩ませているのは、本会の組織ガバナンスにかかわる次の3つの問題である。運営委員(役員13名、内70歳以上8名)間の認識の共有化がままならないこと、事業の役割分担がスムーズ進まないこと、そして今年80歳になる私の後継代表の問題である。

 

 上記の問題解決は、一朝一夕にはいかないことを認めたうえで、2027年3月の駅舎竣工までには、私なりのリーダーシップを発揮して、問題解決への努力を続けたいと思う。

明治31年建設の登録有形文化財 帯解駅舎

バックナンバー


















2024年1月1日 

誰もが”◯刀流”の時代へ(NPO政策研究所会員 匿名希望・大阪府枚方市在住)