2021年9月から、会員+αの皆様によるコラムを隔月で掲載しています。
2026年5月1日
「人」に投資するという選択
ー「NPO若人エンパワープロジェクト(妹子プロジェクト)」を振り返ってー
仲野 優子(認定NPO法人しがNPOセンター/NPO政策研究所、草津市在住)
NPOを取り巻く環境は、この10数年で大きく変化した。制度が成熟し社会的な認知も広がる一方で、担い手の高齢化や財政基盤の脆弱さが顕在化している。役割を終えて「解散」を一つの健全な出口戦略とする団体がある一方で、若い世代が新たな課題に向き合い意欲的に活動を始める動きも各地で見られるようになってきた。
こうした「転換期」の少し前、私たち「しがNPOセンター」では、一つの取り組みを行った。2014年度から2017年度にかけて実施した「NPO若人エンパワープロジェクト(妹子プロジェクト)」である。
「事業」ではなく「人」へ投資する
妹子プロジェクトは、滋賀県内のNPOで働く若手の職員やリーダーを対象とした人材育成事業で、2年を1期とし、2期行った。当時のNPO支援は、事業や活動への「助成」が中心で、人材そのものに継続的に投資する仕組みは一般的ではなかったが、私たちは「人材育成」を支援の軸に据えることを選んだ。
組織運営に必要な知識やスキルを学ぶ連続講座やワークショップに加え、それぞれが自団体の課題と向き合い、小さくても実践的な事業を企画・実施する機会をつくった。認定NPO法人としての特性を生かし、寄付を原資としたのが特徴である。参加者や参加団体に費用負担を求めることなく、寄付によって「人材育成を社会全体で支える」ことを具体的な形にした。なお、遣隋使として隋に派遣された小野妹子は滋賀県大津市の出身である。
伴走するメンターという存在
手法として採用したのが、継続的なメンタリングによる伴走支援である。単発の研修で終わらせるのではなく、複数人がメンターとなり、参加者一人ひとりに寄り添いながら、企画から実施、振り返りまでを共に考えていった。
参加者からは、「理念やミッションを改めて言葉にできた」「所属団体を客観的に見つめ直すきっかけになった」「NPOで働く仲間のネットワークができた」といった声が寄せられた。目に見える成果だけではなく、考え方や姿勢といった“内側の変化”が育まれていった時間でもあった。
10年後に見えてきたもの
プロジェクトの終了からまもなく10年になる。直後に劇的な成果があったわけではないが、現在、子育て支援やフリースクール、福祉や地域づくりの現場において、当時の参加者をはじめとする若い世代が、それぞれの場所に踏みとどまり、次の人を支えながら活動を続けているのを見ると、この取り組みが「時間をかけて効いてくる支援」であったことを実感する。
私たちしがNPOセンターは現在、事業規模を見直しながら、社会的役割を改めて問い直す段階を迎えている。何を引き継ぎ、何を手放していくのか。時間軸を念頭に置いて「NPOの社会的基盤を静かに整える」作業は、今もなお続いている。これからも私たちなりの形で、市民社会の土壌を耕していきたいと考える。
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