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2026年7月1日
「地道な対話」と「生成AI」を編み直す
北川真理子 NPO政策研究所 理事(京都市在住)
「便利になるのは分かりますが、私たちの活動で一番大切な“顔の見える関係”が薄れてしまいませんか」
市民活動や地域自治の現場に身を置いていると、このような戸惑いの声を耳にすることが増えた。「デジタル化」や「生成AI」をいかに取り入れるかという議論は、いまや避けて通れない。しかし、日夜地域課題に向き合う現場の熱量を知る人ほど、無機質なテクノロジーに対して慎重になるのは自然なことかもしれない。
とりわけ生成AIの活用については、昨今では自治体でも導入が進む一方で、現場では活用に抵抗のない層と、拒絶を示す層との間でギャップが広がっている。残念なのは、生成AIを活用した仕事を「これくらい自分の言葉で書かないと」「感情がこもっていない」と頭から否定し、そこで思考停止してしまう議論がまだまだ少なくないことだ。効率化を全否定するあまり、本来その先にあるはずの「市民同士の交流や、対話の質をどう高めるか」という本質的な問いにまで辿り着けないのは、非常に勿体ない。
確かに、市民の自治活動の本質は、マニュアル化できない対話や信頼関係の構築そのものにあり、決してデジタルには置き換えられない。しかし、特に地域コミュニティの運営においては、高齢化による担い手不足や知見の属人化が起きやすく、また活動に伴う負担の重さから若い世代や子育て世代に敬遠され、世代交代が進まないといった慢性的な課題が深刻化している。
さらに、現在の活動を支える層にはパソコン(PC)操作に不慣れな人も少なくない。AIを活用しないまま事務作業に膨大な手間と時間をかけ、その上で本来の「地道な現場の対話」もこなす二重の負担を背負い込んでいるのが実態だ。結果として、特定の個人の能力や自己犠牲によって活動が維持され、現場が疲弊していく悪循環が起きている。こうした構造的な限界を前に、従来のやり方に固執し続けることこそ、地域の持続可能性を揺るがす最大のリスクではないだろうか。
ここで発想を転換してみたい。生成AIは私たちの温かい対話を「奪う」ものではなく、むしろ山積する事務負担から解放し、貴重な対話の時間を「守る」ための道具ではないか、と。
例えば、会議の文字起こしや申請書の素案作成、イベントのターゲットを意識した魅力的なチラシのキャッチコピーづくりなどの業務は生成AIの得意分野だ。PC操作に不慣れであっても、AIとの日常的な「対話(プロンプト)」を通じて驚くほど事務を効率化できる。そうして浮いた時間と心理的余裕を使って、現場へ足を運び、世代を超えた対話の場を設け、地域のキーパーソンの声を聴き、その思いに寄り添う活動を充実させたい。組織の「頭脳(事務作業)」にはデジタルを、そして組織の「心臓(関係性・合意形成)」には、人間にしか生み出せないアナログなエネルギーを最大出力で注ぎ込むことができる。
「地道な現場の対話」と「生成AI」を対立させるのではなく、一本の強靭な糸として編み直すこと。それこそが、属人的な限界を超え、地域固有の活動を持続させていく鍵になるはずだ。
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